2011.03.06 Sunday
肥後銀行旧御船支店
熊本県のほぼ中央に位置する御船町は、かつて酒造で栄えた町です。その中心部を東西に御船川が流れており、左岸には古くからの商家や酒蔵などが建ち並び商店街も形成されていました。川沿いには白壁の大きな酒蔵がいくつも建ち並び、その光景は壮観だったといいます。
しかし昭和30年代に、御船川の対岸(御船川右岸)に国道が整備されたことにより、街並みに大きな変化がおこります。町の中心ともいえる役場や郵便局、また警察署や保健所、職業安定所など多くの官公庁がその国道側に移転。それに追従するように銀行や企業の支店、商店なども移り、国道沿いは市街化していきました。
その結果、旧市街には魅力的な古い街並みの光景が多く残されることになります。ただ残念なことに現在酒造業は一軒も残っておらず、御船川沿いの酒蔵も河川改修により全てなくなっています。それでも、商家や民家などに白壁土蔵造りの建物が多く残されており、町並みの中にそれらを見つけながら散策を楽しめるエリアになっています。
さて、前置きが長くなりましたが、その旧市街の中心を抜ける大通りに、一見して“銀行”であったであろう立派な建物を見つけました。現在は職業訓練校の看板が掲げてあります。
ご近所の老人に話しを聞くと「今から30、40年前まで肥後銀行の支店があったんだよ」と。なるほど「肥後銀行旧御船支店」と言うわけです。何時ごろ建てられたかまではご存知ないよう。
別角度から。建物自体は木造で瓦葺。入口はシャッターが閉められ、中をうかがうことはできませんでした。
全体的に派手さはありませんが、壁面の装飾などは随分と細かな仕事がしてあります。
軒裏を見上げて。コーナー部分の処理がおもしろい。
現地で建物を見ながらいつの時代のものなのか推測するのも楽しいものです。私は昭和初期かな?とも思ったのですが、敷地脇には煉瓦の塀も残っており案外古いのかも…。で、結局見当も付きませんでした(笑)。みなさんどう思います?
正解ですが、この建物は大正10年9月1日に旧肥後銀行(現在の肥後銀行ではない)の御船支店として開設されたもの。大正12年に合併により安田銀行御船支店となりますが、昭和3年に肥後銀行が譲り受けます。そして昭和52年まで「肥後銀行御船支店」として使われていました。肥後銀行御船支店としては、老朽化やオンライン化への対応などの理由で国道沿いに新店舗を建設し移転しています。
肥後銀行御船支店だったこの建物、熊本県内に残る大正時代の銀行建築として貴重な建物ではないでしょうか。
Googleマップのストリートビューアーでこの建物前の通りを見ることができます。ちなみに、この通りには明治時代に2日間だけ熊本県庁が置かれていました。県庁跡を示す標柱をストリートビューアーでも見ることが出来ますよ。
【参考文献】
「御船町史」御船町史編纂委員会編・御船町・2007年
「肥後銀行50年史」肥後銀行企画室年史編集班編・株式会社肥後銀行・1977年
「肥後銀行70年史」肥後銀行企画部年史編纂担当編・株式会社肥後銀行・1996年
【取材協力】
株式会社肥後銀行 文化・広報室
しかし昭和30年代に、御船川の対岸(御船川右岸)に国道が整備されたことにより、街並みに大きな変化がおこります。町の中心ともいえる役場や郵便局、また警察署や保健所、職業安定所など多くの官公庁がその国道側に移転。それに追従するように銀行や企業の支店、商店なども移り、国道沿いは市街化していきました。
その結果、旧市街には魅力的な古い街並みの光景が多く残されることになります。ただ残念なことに現在酒造業は一軒も残っておらず、御船川沿いの酒蔵も河川改修により全てなくなっています。それでも、商家や民家などに白壁土蔵造りの建物が多く残されており、町並みの中にそれらを見つけながら散策を楽しめるエリアになっています。
さて、前置きが長くなりましたが、その旧市街の中心を抜ける大通りに、一見して“銀行”であったであろう立派な建物を見つけました。現在は職業訓練校の看板が掲げてあります。
ご近所の老人に話しを聞くと「今から30、40年前まで肥後銀行の支店があったんだよ」と。なるほど「肥後銀行旧御船支店」と言うわけです。何時ごろ建てられたかまではご存知ないよう。
別角度から。建物自体は木造で瓦葺。入口はシャッターが閉められ、中をうかがうことはできませんでした。
全体的に派手さはありませんが、壁面の装飾などは随分と細かな仕事がしてあります。
軒裏を見上げて。コーナー部分の処理がおもしろい。
現地で建物を見ながらいつの時代のものなのか推測するのも楽しいものです。私は昭和初期かな?とも思ったのですが、敷地脇には煉瓦の塀も残っており案外古いのかも…。で、結局見当も付きませんでした(笑)。みなさんどう思います?
正解ですが、この建物は大正10年9月1日に旧肥後銀行(現在の肥後銀行ではない)の御船支店として開設されたもの。大正12年に合併により安田銀行御船支店となりますが、昭和3年に肥後銀行が譲り受けます。そして昭和52年まで「肥後銀行御船支店」として使われていました。肥後銀行御船支店としては、老朽化やオンライン化への対応などの理由で国道沿いに新店舗を建設し移転しています。
肥後銀行御船支店だったこの建物、熊本県内に残る大正時代の銀行建築として貴重な建物ではないでしょうか。
Googleマップのストリートビューアーでこの建物前の通りを見ることができます。ちなみに、この通りには明治時代に2日間だけ熊本県庁が置かれていました。県庁跡を示す標柱をストリートビューアーでも見ることが出来ますよ。
【参考文献】
「御船町史」御船町史編纂委員会編・御船町・2007年
「肥後銀行50年史」肥後銀行企画室年史編集班編・株式会社肥後銀行・1977年
「肥後銀行70年史」肥後銀行企画部年史編纂担当編・株式会社肥後銀行・1996年
【取材協力】
株式会社肥後銀行 文化・広報室