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馬見原発電所

 もう5年も昔のことになりますが、チッソの前身である日本窒素肥料株式会社の鏡工場(熊本県鏡町・現八代市)について当サイトで紹介しました。明治から昭和初期の九州南部で、一民間企業が化学工場と水力発電所をセットで造りながら成長し、ついには朝鮮にまで進出する巨大化学企業となる歴史はとても興味深いものでした。

 その日窒の鏡工場は大正15年にはなくなりますが、取って代わるように当時最新の技術を使った工場が宮崎県延岡市に建設されます。日窒が延岡市に工場の建設を決めた理由のひとつに、五ヶ瀬川水系の豊富な水資源があったといわれています。実際に大正14年から昭和2年の間に、五ヶ瀬川発電所・馬見原発電所・川走川第一発電所・川走川第二発電所などが五ヶ瀬川水系に作られて延岡工場に電力を供給します。ちなみに延岡工場は後に日窒から独立し、旭化成株式会社のルーツとなっています。

 熊本県にある馬見原発電所、川走川第一発電所、川走川第二発電所は、建設当時の古い建屋を残しており、日窒に絡む発電所建築として私にとっては非常に気になる存在でした。いつか見に行こうと思って延び延びになっていたところ、当サイト掲示板に馬見原発電所の写真がUPされているではありませんか!これは見に行かなくてはと、一気に日窒(旭化成)関連の発電所巡りをした次第です。

 その中から、今回は馬見原(まみはら)発電所を紹介。大正12年に設立された阿蘇水力電気株式会社により建設されたもので、大正15年2月に完成。翌年の昭和2年には阿蘇水力電気は解散し、馬見原発電所は日窒へと譲渡されました。

馬見原発電所
馬見原発電所

 馬見原発電所は、五ヶ瀬川本流と三ヶ所川の合流地点から僅かに上流の三ヶ所川左岸に位置しています。上写真は三ヶ所川右岸より撮影。白川発電所緑川発電所などの、日窒の他の発電所とよく似た意匠の外観でコンクリートブロック構造。最大出力は5,000kwです。しかしまあ、よくこんなギリギリの場所に建設したものですね。

馬見原発電所

 外壁は白く塗られていますが、その下地から面白い“模様”が浮き上がっています。戦時中、爆撃を避けるために迷彩として塗られたものだと思いますが、敵機から見たら実際どうだったのでしょう。チッソ水俣事業所内の戦前の建物や、曽木発電所の煉瓦壁にもこれら迷彩柄を見ることができるのでそれなりに効果はあったのかな。

馬見原発電所

 立地的に建物を観察する角度が限定されますが、妻壁に面白いもの発見しました。一見ただの換気口ですが、フードの取り付け壁面をよく見てみると丸くコンクリートブロックが配置されていることがわかります。煉瓦建築などの妻壁上部の三角形部分(ペディメント)に丸窓が設けられているのをよく目にします。それらに比べると若干下側過ぎるかな…とも思いますが、同様に元は丸窓だったのかもしれませんね。

馬見原発電所の沈砂池

 発電所へ行く途中に上部水槽があります。上写真の右下側には導水トンネルがあり、およそ6km離れた五ヶ瀬川上流から取水した水が流れ込んでいます。それにしても眺めが良すぎて怖いくらい(笑)。

馬見原発電所

 馬見原発電所を上から。写真左上にみえるのは九州電力の三ヶ所発電所。水利権許可年度をみると大正14年とあるので随分古いことがわかりますが、建屋は真新しいものに更新されています。

馬見原発電所の取水口

 五ヶ瀬川にある馬見原発電所の取水施設。石組みで曲線の美しい堰堤に見えますが、熊本県の近代化遺産調査報告書によれば石張りコンクリート重力式で内部には玉石コンクリートが充填してあるとのこと。


 右上の“蘇陽峡”の文字にあるマーカーが発電所。左下のマーカーが取水施設。

 古い水力発電所はへんぴな場所にあることが多いのですが、この馬見原発電所も例外ではなく非常に到達困難な場所にありました。もちろん発電所まで車道はありますが、軽自動車でも通行は厳しいと思われます。

 発電所への行き方ですが、まず国道218号から服掛松キャンプ場を経由し「蘇陽峡・長崎鼻展望所」を目指します。小さな案内板が何箇所にもあるので長崎鼻展望所までは迷うことはないでしょう。展望所を過ぎると道は一気に谷底へと下って行くのですが、急勾配な上に狭くてガードレールもありません。さらには極端な極小カーブの連続ですので、車はその展望所の駐車場に置いて徒歩で下ることをオススメします。バイクや自転車であれば通行に余裕はありますが、十分な注意が必要。しばらく下ると1か所だけ分かれ道があり、「この先行き止まり」の看板の方へ進めば発電所が見えてきます。分かれ道のもう一方は、対岸である五ヶ瀬川左岸へと渡ることができます。

※国土地理院1/25000地形図の情報は古いので注意してください。地形図には馬見原発電所と三ヶ所発電所の間に橋がありますが、現在は橋台が残っているだけ。現状は五ヶ瀬川左岸と三ヶ所発電所の間に新しい橋が架けられています。ちなみにその橋の上からだと馬見原発電所もよく見えますよ(当記事1枚目の写真)。

通行注意

長崎鼻展望所手前にある看板。“脅し”ではありませんでした。

【関連記事】
「雑記帳:馬見原発電所
「雑記帳:川走川第一発電所
「雑記帳:川走川第二発電所
「雑記帳:五ヶ瀬川発電所
報告書」> 日窒鏡工場跡・小千代橋 > No.05

【参考文献・資料】
「一級河川における水力発電施設諸元一覧 九州地方整備局管内」国土交通省
「熊本県の近代化遺産 近代化遺産総合調査報告」熊本県教育委員会
遺産探訪/工場・電力関連 | permalink | comments(5) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

戦時迷彩と脅し看板に興味アリです。
この物件の迷彩は遠くから見て目立たない仕様のため、近づくと変な模様に見えるのでしょう。
注意看板は北海道で見た「熊出没」なみにコワいです。絶対なにかありそうな説得力があります。
まるか | 2010/11/22 7:39 PM
秋の「蘇陽峡」素敵でしょうね。(紅葉のころ行く予定がまだ実行できていません。現在は、平戸・佐世保地区に集中してます。)馬見原発電所の写真を拝見し、撮られる角度ほか流石と感じ入っています。丸窓部分を改修して鉄製のフードを取り付けその内側には換気扇らしきものが。私なりには残念なことですが、実用的になっていく様子を垣間見ることができました。取水施設からの距離6kmもたいしたもんだと感心しています。それにしても、自転車で訪れるためには、超ハードと思います。
竹 | 2010/11/23 11:26 AM
>まるかさん

戦時迷彩って面白いもんですね。ちょっと調べてみようと思います。それと例の看板ですが、控えめな文章になっているところが逆に怖いんですよ。

>竹さん
取水施設から発電所までの導水トンネルは人力による掘削だそうですから、それは大変だったことでしょうね。それから確かに自転車では超ハードでした。展望台の駐車場に車を置いて、そこから自転車で下れば楽に行けると思ったもので…。でも帰りは自転車押して登らなければなりませんね。
ゴン太@管理人 | 2010/11/24 2:13 AM
こんな山奥の発電所にも迷彩していたというのが驚きです。
さすがにこんな山奥の、こんな小さい施設は攻撃対象とならなかったと思いますが・・・。

しかし大変アプローチしずらい場所ですね。ゴン太様がレポートして下さったので、私は現地に足を運ばなくてもいいかな(笑)
k-kai | 2010/11/25 1:17 AM
>k-kaiさん

迷彩はどのような基準で行なわれていたのかも気になりますね。

>アプローチしずらい場所

例の発電所に比べたら、道があるだけ楽勝です(笑)。
ぜひk-kaiさんも足を運んでみてください。
ゴン太@管理人 | 2010/11/30 9:46 PM
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