マップ 報告書 掲示板 リンク 雑記帳
このサイトについて お問い合わせ TOPページへ 九州ヘリテージ

九州の近代化遺産・産業遺産を見て・調べて・紹介!するブログ
<< 川走川第二発電所 | ブログTOPへ | 下滝下発電所 >>

五ヶ瀬川発電所

 五ヶ瀬川水系の日窒(旭化成)関連発電所巡り、4回目は五ヶ瀬川発電所です。この発電所は大正9年設立の五ヶ瀬川電力株式会社により建設されます。大正11年7月に着工しますが、延岡からの機材・資材の運搬は非常に困難を極めたとのこと。輸送は牛馬と人力に頼るもので、発電機などの重量物は平底の船で五ヶ瀬川を遡り、途中からは牛を使いコロ引きしたそうです。それでも馬見原発電所などに比べると立地としては条件が良かったようで、他とは違う大型の発電所が建設できたのだと思います。

 大正14年1月に発電所は完成しますが、翌年8月に五ヶ瀬川電力株式会社は日窒に買収されることに。この時代の日窒の発電所建設は、一旦新たに設立された別会社により行なわれることがあります。この五ヶ瀬川電力以外にも緑川電力※(緑川発電所)、阿蘇水力電気(馬見原発電所)などがあり、いずれも竣工して何年も経たないうちに買収、譲渡などで日窒に吸収されてしまっています。明らかに日窒の工場への送電を想定した発電所ですので、初めから日窒の手で建設すればいいのではないか?という疑問が。このような事例は他にもありそうで、何か理由があったのかもしれませんね。

※緑川電力は津留発電所を作った会社で、日窒の「旧緑川発電所」とは関係ない。2013年3月4日追記。

 宮崎県日之影町の五ヶ瀬川沿いにある旭化成五ヶ瀬川発電所。廃線となった高千穂鉄道の日之影駅から500mほど延岡側へ行くと見えてきます。
 
五ヶ瀬川発電所

 3本の水圧鉄管があり、建物もこれまでの発電所に比べると大きくなっています。最大出力も13,500kwと、馬見原や川走川第一第二と比べ一桁違います。

五ヶ瀬川発電所

 対岸の県道237号から良く見えるためか、壁面には大きな「旭化成」の文字が見えます。

五ヶ瀬川発電所

 こちら側から見る建屋は、馬見原や川走川第一第二とほぼ同じ意匠です。ただ、丸窓に見える部分は換気口程度の穴が開いているだけのようでした。また、コンクリートブロック構造なのか、鉄筋コンクリート造なのかは外観からは判断がつきません(資料不足…スミマセン)。

五ヶ瀬川発電所

 発電所の裏手には車道が通っており、なんと水圧鉄管と発電所建屋の間を通り抜けることができます。直径2mはあろうかと思う水圧鉄管3本は迫力満点。その水圧鉄管と発電所建屋の接合部分真上に立つと、重低音で“ゴー”という水力発電所独特の腹に響く振動と音を堪能できます(笑)。

五ヶ瀬川発電所

 反対側に回って、こちらは放水口。水圧鉄管から発電所建屋に入った水は、(発電機の)水車を回した後にここから五ヶ瀬川に排出されます。石組みの三連アーチが特徴的で、周りの石垣も立派。

五ヶ瀬川発電所

 五ヶ瀬川下流側から見ると、上部水槽・水圧鉄管・発電所建屋・放水口と施設全体を一望することができます。取水堰などの設備も見てみたかったのですが、今回は時間が無く断念。あらためて行ってみたいと思っています。


 上記説明の通り高千穂鉄道の日之影駅を目指して行けば、五ヶ瀬川対岸に簡単に見つけることができます。

【関連記事】
「雑記帳:馬見原発電所
「雑記帳:川走川第一発電所
「雑記帳:川走川第二発電所
「雑記帳:五ヶ瀬川発電所
報告書」> 日窒鏡工場跡・小千代橋 > No.05

【参考文献・資料】
「一級河川における水力発電施設諸元一覧 九州地方整備局管内」国土交通省
「熊本県の近代化遺産 近代化遺産総合調査報告」熊本県教育委員会
遺産探訪/工場・電力関連 | permalink | comments(8) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

ここなら私も見に行きました。アクセス容易ですしね。
取水設備は二つあるようですね。
私は小さい方を見ました。(日向川取水堰)

次は高千穂発電所をアップしてください〜。
k-kai | 2010/12/12 8:03 PM
どうでもいい事かもしれませんが、チッソでは
「安全+常に」
となっているのが、同根企業とは言え旭化成では
「指差呼称」
となっているのですね。

本当にどうでもいい事ですみません(笑)
吉松真幸 | 2010/12/17 12:19 AM
>取水堰が2つある

たびたび恐れ入ります。
日向川、追川等の取水口はありますがそれらは補助であり、主取水は水ヶ崎発電所下流にあります。五ヶ瀬発電所まで約10kmの隧道が掘られています。
また水ヶ崎発電所の主取水は国見ヶ丘近辺になります。こちらも隧道ですが高千穂峡駐車場で一部通水路となり流れを見る事ができます。
yamei | 2010/12/21 12:10 AM
>yameiさん

たびたび情報をありがとうございます!
非常に貴重な情報を感謝します!
ゴン太@管理人 | 2010/12/26 2:57 PM
>k-kaiさん

取水堰が2つあるんですね。情報をありがとうございます。
地図だけではわからないものなんですね。

>吉松真幸さん

企業によって重要な標語っていろいろあるようですね。同根企業でも違いがでるのは確かに面白いものです。
ゴン太@管理人 | 2011/01/10 12:43 AM
大昔、私の父も、そしてさらにずっと前には、祖父もこの発電所の所長を務めました。
大変懐かしいです。
有難うございました。
ai | 2012/10/27 11:02 AM
超遅レスですみません。
2代で発電所長とは凄いですね。
もしかしてaiさんも、所長??
ゴン太@管理人 | 2013/03/05 12:01 AM
五十数年前、父が九州電力に勤めていて、勤務地がこの発電所でした。懐かしいですね〜。五ヶ瀬川では、テナガエビ釣りをよくしていましたね。九州電力から旭化成に権利が移り、九州電力関係者(勿論父も)はばらばらになりました。
飯干 福馬 | 2016/08/24 12:53 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
この記事に対するトラックバック
<< March 2024 >>
SunMonTueWedThuFriSat
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
最近の記事
九州ヘリテージいち押し!
肥薩線の近代化遺産
肥薩線の近代化遺産
熊本産業遺産研究会
雑記帳でも紹介しています。
最近のコメント
最近のトラックバック
プロフィール
購 読
RECOMMEND
廃墟という名の産業遺産
廃墟という名の産業遺産 (JUGEMレビュー »)
小林 伸一郎,栗原 亨,酒井 竜次,鹿取 茂雄.他
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
九州遺産―近現代遺産編101
九州遺産―近現代遺産編101 (JUGEMレビュー »)
砂田 光紀,国土交通省九州運輸局,九州産業・生活遺産調査委員会