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下滝下発電所

 日窒(旭化成)関連の発電所の紹介も一区切りついたので少し違うジャンルのネタを…と思っていたのですが、最近Twitterにて「九州には木造の発電所はありますか?」という質問を頂きました。木造の水力発電所といえば“廃”発電所の鮎帰発電所を思い出しましたが、現役のものとなると…。ひとつだけ心当たりがあります。

 実は以前紹介した馬見原発電所を見に行った際、周辺を散策していて偶然にも小さな木造の水力発電所を見つけていました。国土地理院1/25000地形図にも掲載されておらず、事前にその存在を全く知らなかったので現地ではとても驚き興奮したのは言うまでもありません(笑)。

 その発電所とは、九州電力の「下滝下発電所」です。企業の自家用発電所なら有り得ると思っていた木造建屋ですが、まさか九州電力にその様な発電所が残っていたとは。電力会社の発電所は機器更新などで古い時代の建屋が残っていないという固定観念があったため、今まで九州電力の発電所はほぼノーマークでした。やはり様々な方向をチェックしていないといけませんね。

下滝下発電所

 上の写真は車道から谷を見下ろして撮影したもの。下を流れるのは五ヶ瀬川です。道路脇に細い水圧鉄管が通っているのを偶然見つけたので、辛うじてその存在に気が付くことができました。ここから見ると、発電所というより“小屋”と言ったほうがぴったりくる感じ。

下滝下発電所

 驚くことに発電所の敷地には車道は繋がっておらず、このような階段を数十メートル下ります。機器メンテや更新などの際は重量物の運搬に苦労しそうですが、車道も繋がっていないほど条件が厳しい場所にあったからこそ、木造の小さな建屋が残ったのかもしれませんね。

下滝下発電所

 手前にスレートの倉庫や増築された部分もありますが、発電所建屋本体は切妻屋根の木造平屋です。細部を見てみると…。

下滝下発電所

 特徴的なのがこの石積みの部分。地面から1メートルとちょっとの高さまでが石積みになっています。フェンスの外から確認する限りでは、建物ぐるっと一周全体的に下側が石積みになっているようです。水を使うということや立地などから、湿度を嫌って木造部分を地面から遠ざける意味合いでこのような造りになっているのかも。

下滝下発電所

 フェンス越しにズームアップ。建屋入口には庇がありますが、その持ち送りには曲線の意匠が施されています。目を引く部分ですね。

下滝下発電所

 施設の全体像。左奥には水圧鉄管が見え、その上を横切っている車道から1枚目の写真を撮影しました。

下滝下発電所

川に下りてから撮影。石垣の中央にはコンクリートアーチの小さな放水口が開いています。写真を見て気が付きましたが、室内では蛍光灯がついていますね。

 現場では、建屋に掲げられている表札や水利使用標識などから九州電力の下滝下発電所だということ位しかわかりませんでした。しかし細部を見てみると結構古い建物であることは予想できます。「もしかしたらスゴイお宝級の発見かも」なんて勝手なことを考えながら帰路につきました。

 帰宅後、数少ない手持ちの資料で「下滝下発電所」を探したところ、「熊本県の近代化遺産 近代化遺産総合調査報告」(熊本県教育委員会)でちゃんと取り上げられていました(汗)。さて、その資料によると下滝下発電所は大正10年2月に運転開始(九州電力のサイトでは大正10年12月※コメント欄に詳細あり)と判明!大正時代の木造建屋の発電所が現役で、しかも九州電力の発電所として現存しているとは実に素晴らしいことではないでしょうか。

 木造建屋で現役というだけでも“九州唯一”ではないかと思いますが、この下滝下発電所の最大の特徴は洞窟内の湧水だけを取水して発電する“九州唯一”の湧水発電所だということです。通常、1/25000地形図には水力発電所がある場所には青い破線で導水トンネルが描かれていますが、この下滝下発電所には取水堰や導水トンネルも無いわけですからその表記もありません。また68kwと桁外れに小さい最大出力も湧水だけを使った水力発電だということを考えると納得です。原子力発電所も有する電力会社にも、このような個性的な発電所があるというのは面白ですね。

 偶然に見つけた発電所ですが、多くの発見と教訓を得た一件でした。もう一度、九州電力の発電所をチェックしてみなくては。


 右のマーカーは馬見原発電所で、左側が下滝下発電所。蘇陽峡の東(馬見原発電所)側からでなく、西側の国道265号側からのアクセスがオススメです。

【関連サイト】
NPO法人くまもと温暖化対策センター」> 小水力発電

【参考文献・資料】
「一級河川における水力発電施設諸元一覧 九州地方整備局管内」国土交通省
「熊本県の近代化遺産 近代化遺産総合調査報告」熊本県教育委員会
遺産探訪/工場・電力関連 | permalink | comments(8) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

こんにちは。

大正期の木造発電所がいまだ現役とは!!
しかも湧水の発電所ですか!?
発電できるほど水が湧き出るものとは・・・
とにかく全てがビックリです。

今年も色々紹介して下さり、ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
それでは、よいお年を。
k-kai | 2010/12/30 8:22 AM
>k-kaiさん

こちらこそ、色々とありがとうございました。
今年も宜しくお願いいたします。
ゴン太@管理人 | 2011/01/01 11:43 PM
明けましておめでとうございます。
旭化成の発電所シリーズ&今回の記事、懐かしいような新鮮なような気持ちで読みました。
しかし湧水利用の発電所とは驚きです。そんなのがあるとは。
たぶん近くの集落の電灯用に造られた発電所だった、というか今もそうみたいですね。水量の増減や濁りに左右されにくそうだから安定してるかも。裏庭の変電・送出設備はさすがに現代仕様になってますけど、ケーブルヘッドの繋がっている柱の手前に元々は変圧器があったんでしょうね。
送電線ばかり追いかけていると、配電線に直接連系されているこういった施設にはなかなか行き着きません。大変いいものを見せていただきありがとうございました。
たぬ猫 | 2011/01/03 5:42 PM
あけましておめでとうございます!!!
ビバ!五ヶ瀬川!
水力の中でもトップクラスの物件です!

今年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
F | 2011/01/04 4:37 PM
>たぬ猫さん

リンクの関連サイト「NPOくまもと…」には、一般家庭34分に相当と書かれているので仰るとおりに近くの集落用なのかもしれませんね。

>配電線に直接連系されているこういった

たぬ猫さんのご指摘で初めて気が付きました。これまた面白いですね。確認できる機会があればこの点を含めて見てみたいと思います。

>Fさん
>ビバ!五ヶ瀬川!

思わず吹き出しました。でもそんな感じです(笑)。
こちらこそ、今年も宜しくお願いします。
ゴン太@管理人 | 2011/01/09 10:38 AM
管理人ゴン太さま

下瀧下発電所は、熊本県教育委員会編『熊本県の近代化遺産−近代化遺産総合調査報告−』に「大正10年2月竣工」とあるとのこと。少し補足させて下さい。
下瀧下発電所は、馬見原水力電気株式会社〈熊本県阿蘇郡馬見原町、代表者山口三省、主任技術者松浦義雄〉が五ケ瀬川左岸湧水を利用する発電所で、大正9年10月22日熊本逓信局許可、大正10年10月10日開業しています。
大正10年2月竣工から、9ケ月経っての開業です。「九州電力(株)」サイトでは、運転開始日が「大正10年12月」となっています。これって間違っていませんか。
私自身、もう一度調べて見ますが・・・。
菖蒲和弘 | 2011/05/01 4:25 AM
菖蒲様

もう一度資料を読み直してみましたところ、私の書き方がよくありませんでした。熊本県の報告書では、大正10年2月には“竣工”ではなく“運転開始”とあります。しかし確かに九州電力のサイトにある運転開始が「大正10年12月」とありますね。

水利権の許可年月日が大正9年11月3日であることは国交省の資料にもありますので、菖蒲さんが調べられた大正10年10月10日開業を合わせて考えても運転開始は「大正10年12月」が正解ではないでしょうか。
ゴン太@管理人 | 2011/05/03 12:45 AM
ゴン太さま

コメントありがとうございます。
もう一度、熊本県の史資料を調査してみました。大まかな所は、前回記述した通りですが、若干、補足箇所がありました。
■■馬見原水力電気株式会社■■
熊本県阿蘇郡馬見原町、代表者山口三省、主任技術者松浦義雄、目的燈力(電燈電力供給)、原動力水力、発電所名下瀧下発電所、菅尾村大字今字瀧下、取水口菅尾村大字今字瀧下、五ケ瀬川左岸湧水、放水口同所、水量4立方尺、落差208尺2、馬力136、80、大正9年10月22日熊本逓信局許可、大正10年10月10日開業、大正10年12月3日発電開始

発電開始=運転開始は、ゴン太さまの推測通り、「大正10年12月3日」でいいようです。下瀧下発電所は、「菅尾発電所」とも書かれた時期があったようです。
掲示板で紹介した発電所記事も、追加記事があります。機会を見て、改訂いたします。
菖蒲和弘 | 2011/05/05 1:52 AM
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